家づくり

住まい手基準の気持ちよさの追求。両親への想いが詰まった平屋

     
平屋

 

古くから住む場所に調和し、年齢に合わせた設備と暮らす

 

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座敷から南側を望む。ガラスも障子も大きく開けて、庭と山が広がる景色を存分に楽しむことができる

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屋根は外から見たときに、目につきやすい。周囲の家となじむよう道路側からは寄せ棟に見えるかたちにした。屋根のかけかたは室内の環境にも影響するため苦労したそう

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庭から見た座敷。屋根の上に見えている小窓は暗くなりがちな北側の土間に光を落とすためにとりつけた

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普段は戸を開けっ放しにして、土間から出入りする。コーヒーでも淹れてくつろげるように中央に大きなテーブルを置き、お湯をわかせる程度のIHと簡単なシンクをつけた

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形ばかりでも玄関がほしいということで、建て替え前と変わらない幅の玄関を東南の位置に設けることに

きっかけは、東京で暮らすご夫婦からの依頼だった。広島に住む両親が、家を建て替えることになったのだという。道路の拡幅工事が決まり、道路予定地にかかっている家を後ろに下げなければならない。どのみち建て替えるなら高齢のご両親が安心して暮らせる家にしたい、と娘さんは話した。冬の冷え込みが厳しく、氷のように冷えきった家を毎朝、ストーブをつけて“解凍”する。そんな生活も、年を重ねるときつくなってくる。離れて暮らしていることもあり、これからを考えて少しでも快適な家にしてあげたいという気持ちがあった。

そんな現状を聞いた設計事務所STUDIO COVOの山口さんは娘さんの話をもとに、ご両親に提案するプランを考えた。「ふたり暮らしなので大きな家は必要ない、コンパクトな住まいにして冷暖房の費用も抑えたいというお話でした。年に数回、親戚が集まったときに大勢で使える部屋と、お母さまが近所の方とおしゃべりできるスペースが欲しいとご希望でした」。

敷地の周辺は周囲を山に囲まれ、田んぼが広がるなかに赤い瓦屋根の農家が点々と見えるような風景だ。隣近所は顔見知りだから昼間は鍵をかけない。山口さんは土地柄を考え、誰でも気軽に入ってこられて長居もできる土間をプランの中核に据えた。近所の人が家で獲れた野菜を手に、土間から勝手知ったる様子で入ってきて、もてなし上手のお母さまと話し込む、そんな絵が浮かんでいた。

ところが、娘さんと一緒に広島のご両親へ提案しにいくと思いがけない指摘があった。東京でつくってきたプランでは土間から出入りするため玄関をつくっていなかったのだが、ご両親にとって玄関は非常に重要な存在だったのだ。「コンセプトは気に入ったけれど、玄関は家の格を表すものだから最低でも建て替え前の家と同じ幅の玄関が欲しいと言われて。玄関がないと家だと思えないということでした。東京に住んでいると分からない感覚で、そういった風習を知るのは面白かったですね」と山口さん。ハウスメーカーが建てたような住宅はほとんどなく伝統的な様式の家が並ぶ、その土地ならではの感覚を理解しようと慎重に打ち合わせを進めた。

その一方で、娘さんのご要望である快適な生活環境も検討した。高齢の身には冬場の寒さも応えるが、心配なのは温度差だ。急激な血圧の変化によるヒートショックは避けなければならない。終日、広い平屋を満遍なく暖めるため、山口さんは寒冷地で使われる暖房をとりいれることにした。床からの輻射熱で暖める地中埋設床暖房で、深夜電力を使って夜のうちに床全体を暖める。設定温度になると自動でスイッチが切れ、そのまま1日過ごしても温度は2〜3度しか下がらない。

「朝起きても寒くないとご両親も大喜びでした。」と山口さん。まず家を暖めることが日課だった冬の朝が大きく変わった。ご両親の家というものに対する考えと東京で暮らす娘さんの心配、そのどちらもじっくり受け止めた家づくりになった。

長く暮らしてきた和の使い心地を残した、和洋折衷の空間

 

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座敷の障子を閉めたところ。襖の代わりに合板の引き戸、畳の代わりにサイザル麻をつかった

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通路の上の窓から入る光で、土間も非常に明るい。年に数回、親類が大勢集まるときには戸を開け放して、土間と座敷と客間を一体にして使う

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今は元気なご両親も70歳を過ぎており、足腰に支障がでてくるのはそれほど先の話ではない。畳に床座の生活も大変になってくるだろうと考えた山口さん。一日の大半を過ごす部屋にはソファとテレビを置くことを想定していた。とはいえ、長年、畳や襖の伝統的な家屋で暮らしてきたご両親にとって、いきなり洋間というのも落ち着かないだろうと、全体のデザインは和洋にこだわらずに考えたという。

熱を逃がさないようペアガラスを入れた窓の内側には、腰がなく組子の間隔を大きくとった障子が入っている。「ここに障子を入れたのは、お住まいになるご両親を考えたからです。年をとってから大幅に生活スタイルを変えるのは大変でしょうから」と山口さん。

襖を入れると和が強くなり過ぎてソファとテレビに合わないため、襖の代わりに真っ黒な合板の引き戸を使った。それでも、隣の客間との間、土間側や庭側の通路との間をすべて引き戸にしてある使い勝手から、和室のような印象を受ける。普段は座敷と客間の戸を閉めて使い、お盆やお正月に親戚が集まるときには全開にして広く使う。

畳の代わりに床に使ったのはサイザル麻だ。ざっくりした編み目と自然の素材の風合いは畳に通じるものがあり、思わず裸足で歩きたくなる。「竣工後に娘さん家族とお邪魔したとき、まだ家具が入っていなかったんですね。ちょうど夏だったので、戸を開けて座敷に寝っ転がると風が抜けて、すごく気持ち良くて。ふわーっと山や田んぼの香りもするんです」と目を細める山口さん。

和室はこう、洋間はこうと決めつけてしまうことがどれだけもったいないか、住む人にとっての気持ちよさを基準にすることがどれだけ大切なことかを改めて思い知らされる。

 

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転載元:http://www.klasic.jp/

 

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