家づくり

家族の暮らしがストンと納まる、工夫に満ちた普段着仕立ての家

     
普段着仕立ての家

「家の設計とは、そこに住む家族の普段着を仕立てる作業だと思います」と語る石井大吾(いしい・だいご)さん。石井さんが実の姉一家のために設計したのは、安心・安全・暮らしやすさを第一に考えた家。不要なコストを大胆にカットしながら、優しい配慮でワクワクするような暮らしを実現した。普通なのに、普通じゃない、魅力的な住まいを訪ねてみた。

標準規格の設備を使いながら、細かな工夫で個性的な家を実現

普段着仕立ての家

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埼玉県越谷市の住宅街に、2015年3月に竣工したT邸。石井さんの実姉ご夫妻と6才、4才、0才のお子さんが暮らす家は、敷地約47坪、延べ床面積約35坪。2つの三角屋根が特徴的な2階建てだ。

「身内の家だからといって、特別なことはしません。いつもの通り、じっくりと要望を聞いて、それを実現する最善策を考えました。」

その言葉通り、石井さんがまず考えたのは、常に最重視する「基盤のしっかりした、安心・安全な家づくり」だった。

「埼玉県の平野部は、昔は田んぼや沼の低湿地だった場所も多く、まず地盤の強度を確認する必要があります。今回も構造の専門家に依頼して、地盤改良も行い充分な強さのある基礎設計をしました当然基盤のコストは大きくなりますが、家は家族を守る場所である必要があります。安全安心な家をつくりたいですよね」。

石井さんにとって、この予算配分は「想定内」のことだった。施主様が高級材にこだわらなかったこともあり、石井さんは手に入りやすい規格品を積極的に使用した。実はこれには、何重もの意味があった。

「コストダウンはもちろんですが、一般的な既製品ならお子さんが汚したり壊したりしてもすぐに変えられます。私はリフォームも数多く手がけていますが、20年30年前の凝った仕様って、傷むと総取り替えするしかなくて費用や手間がすごくかかるんですよ。その点、規格品は常に取り替え可能ですし、デザイン的にも陳腐化しにくい利点もあります。家は必ず劣化するし、生活スタイルも変化します。設計時点で最高の状態を決めてしまう必要があるとは限りません。」

1階のリビングやダイニングの壁は、一般的な白いクロス貼り。大きく取った窓のサッシも通常規格品。天井は構造が露出する造りだが、見える梁は安くて強い集成材だ。

「無垢の梁はカッコいいですが、強度を保つには集成材よりも採寸の大きいものにしないといけなくて、この家には重厚すぎます。クロスというとシックハウスが気になるかもしれませんが、今は製品が改良されていますし、そもそもこの家は施主様と相談して『窓を開けて暮らす』ことを前提にしているので、空気がこもることがないのです」。

東西南北、どちらにも建物が立っていないという開放的な立地なので、T様も「真冬以外は窓を開けています。1階も2階も風通しが良くて、とても気持ちがいいんですよ」とのこと。そんな暮らし方を踏まえての規格品活用なのだ。

ありふれた設備も、工夫次第だ。たとえば玄関を入るとすぐに手洗い場がある。何でもない設備だが、これがとても便利だという。「主人が『露天風呂気分で入浴したい』と言ってバスルームを2階に設置したので、子どもたちが帰って来てすぐに手を洗えるように、私がお願いしました。ママ友からも『これ、いいわね』と評判なんですよ」とT様の奥様は言う。

そのバスルーム横にある2階の洗面台にも工夫がある。「洗面に、深くて広い医療用ボウルを使用しました。業務用の機器は安価で丈夫で使いやすく、シンプルな機能美があるので、よく利用します」。

T様の奥様も、その言葉にうなずく。「大きいから、みんなが一緒に歯を磨けます。3人目の子は、ここをお風呂にしていたんですよ(笑)」。

バスルームのすぐ横には物干し用のバルコニーと、室内干し用の手すりがある。この動線の良さも奥様のお気に入りだそうだ。「ママ友にいちばんうらやましがられるのが、この室内干し場です。空気の動きがあるのか、雨の日でもよく乾くし、乾いたら隣の畳敷きの寝室にパッと入れておいて、あとでたためばいい。すごくラクですよ」。

畳敷きといえば、T邸のリビングは施主様のご要望により最近では珍しい畳敷きだ。そのでき上がりは、施主様の想像を超えていたそうだ。

「リビング全体を35cmほど高くしました。これは標準的な椅子の座面より少し低い程度で、ダイニングの椅子に座った人と畳に座った人の目線が揃います。さらにキッチンで作業する人の目線にも近い高さなので、コミュニケーションが取りやすいのです」と石井さん。

試しにキッチンに立ってみると、ダイニングやリビングにいる家族の様子が、単に「見える」のでなく手に取るように「わかる」。しかも畳の下は広い収納スペースになっていて、T様の趣味であるアウトドア用品が余裕を持って片付けられる。一石何鳥もの良さを持つリビングとなったのである。

普段着仕立ての家

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家族の暮らしがストンとはまる、そんな住まいをつくりたい。

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T邸の特徴は、元気な5人家族にふさわしい「楽しさ」も備えている点だ。

2階には、子ども部屋と踊り場の上に、2つのロフトがある。「2つの三角屋根を設けたのは、このロフトを作るためです」と石井さん。ロフトは子どもたちの遊び場になるだけでなく、大人が楽しめる空間にもなっている。

「子どものお友だちが来ると、家中で探検ごっこやかくれんぼが始まります。とにかく楽しくてしかたないみたいです。踊り場の上にあるロフトは収納スペースですが、天窓があるので、家族で月を眺めたりします。とても気に入っています」とT様。

かくれんぼができるのは、部屋や空間が細かく区切られているからでもある。これも石井さんの工夫の一つだ。

「2階は踊り場を中心に浴室、寝室、2つの子ども部屋と部屋割りをしています。踊り場には小さな台があって、パソコンスペースにもなっています。建築家によっては、こういう余白は極力設けず、大空間を中心に設計する人も少なくありません。でも、私は小空間派なのです。そのほうが熱効率もいいし、メリハリのある家になると思っています。そのなかで、住手が好きな場所や心地よい場所をたくさん見つけてくれたら嬉しいです。」

1階のLDKも、仕切りの戸を閉めれば小さな空間となり、「真冬でも小さなヒーターひとつで温まります」とのこと。仲良く寄り添う家族には、ぴったりの間取りなのだ。

最後にひとつ。庭にある不思議な小山が気になった。子どもたちの大好きな遊び場になっているのだが、実はこれ、地盤改良で出た残土を積み上げたものだそうだ。

「土を処理するのにも費用がかかります。ならば山を作ったらどうかと相談したら、施主様も賛成してくださったので(笑)。結果的に、いいアクセントになりました」。

石井さんにとって、設計とは「暮らしの質を上げる工夫」だ。

「建築家と言うと、何かすごいコンセプトを提示する人みたいで、自分らしくない。私はデザイン=設計の力で、生活の小さな課題を解決する者でありたいのです。この家も、家族の暮らしがストンと納まるプランを、日々の生活から逆算して組み立てました。そこに住む人の普段着を仕立てるような設計を、これからも大切にしていきたいと思います」。

普段着仕立ての家

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転載元:http://www.klasic.jp/

 

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