家づくり

中庭に大きく開いた開口部が魅力!構造にヒノキを贅沢に使った上質な住まい

60代のAさんご夫婦が終の棲家として建てた、神奈川県・二宮町の一軒家。土台や柱といった構造部にヒノキをふんだんに使い、細部まで「上質」にこだわった住まいである。設計を担当したのは、建築家の腰越耕太さん。その細部にわたる家づくりのこだわりを、詳しくご紹介しよう。

目指したのは、多忙な仕事から解放される寛ぎの空間

中庭をコの字型に囲んだプランがA邸の特徴。家の中のいたるところから、角度の違う中庭の景色を楽しむことができる

リビング・ダイニングから見た大開口部。ドアのサッシにも無垢材を用い、温かみを演出している

レッドシダーの軒裏と無垢材の風合い、縁側のような雰囲気も醸し出すタイルとの色のコントラストが美しい

 

緑豊かな神奈川県の山間の街、二宮町に立つA邸。落ち着いたグレーの外観と、ジグザグにデザインされた屋根が印象的な住まいである。Aさんが家づくりを決意したのは、これまで住んでいた家が築30年を超え、老朽化してきたため。「そろそろ終の棲家を建てたい」と考え、住んでいた土地を分筆して新たな家を建てることを決めたのだという。
家づくりにあたって、何件かハウスメーカーを回ったというAさん。そのうちの1社と仮契約まで交わしたが「本当に建てたい家のイメージと、ハウスメーカーが提案してくるプランがどうしてもかみ合わない」と、契約金を反故にしてまでその契約を破棄。理想の住まいを建てるために新たに設計を依頼したのが、共通の知人がいる建築家、腰越耕太さんだった。

最初にAさんと打ち合わせをしたときのことを振り返り、腰越さんはこう語る。
「設計プランを立てて模型を見ていただいたとき、私の設計意図を汲み取って、すぐに依頼を決めてくださったんです。そのときはとても嬉しかったですね」。
Aさんの希望を受け、その要望に細やかに応えるプランを提案した腰越さん。細かいところまで図面を書き、緻密な模型を作成する。そんな丁寧な仕事ぶりが、Aさんにも伝わったのだろう。
当初Aさんから腰越さんに伝えられた要望は、ご夫婦と息子さん用の2つの寝室と和室、そして蔵書を収納できる本棚が欲しいという大まかなもの。それ以外に細かい指定はなかったという。そこで腰越さんが「新しい住まいでどんな暮らしをされたいですか」とAさんに尋ねたところ、返って来たのは「多忙な仕事から帰って、外を眺めてゆっくりできる家」という言葉だった。

そこで腰越さんが考えたのが、庭をのんびり眺めてのんびりと過ごすことができるよう、中庭に向けて大きな開口部を設けた、コの字型プランの住まい。そしてこだわったのが、「上質さ」である。「Aさんとお話をしたとき、見た目の派手さよりも、質の良さを重視する方という印象があったんです。そこで、柱や土台と言った構造体にヒノキを使い、窓枠のあしらいなど細かいところに気を配った、シンプルながら上質な住まいづくりを目指しました」。その言葉どおり、完成したのは、構造など見えないところにしっかりお金をかけ、細部まで丁寧につくられた家だった。

大きな開口部で中庭とリビングの一体化を狙う

玄関を上がった正面に大きな窓が設置されており、中庭の風景が目に飛び込んでくる

 

リビングから眺める中庭の風景。窓を開け放つと、中庭がもう1つのリビングとしての役割を果たし、一体化した空間となるよう意図された

 

フチなし畳を敷いた和室。座った目線の高さに明り取りの窓が設けられている

 

それでは、A邸を詳しく紹介していこう。まず、西側の道路から見た外観は、落ち着いたグレーとジグザグの屋根が印象的である。「道路に圧迫感を与えたくなかった」と語る腰越さん。その意図どおり、エントランス部分はあえて高さが抑えられている。道路側から内部と中庭が直接見えないようコンクリートの壁で目隠しを作り、軒下の空間をくぐって建物に入るというつくりがユニークだ。
そして木製の玄関ドアを開けると、正面には大きなFIX窓が。その奥には、今回の設計の要ともいえる中庭が鎮座している。家に帰ってすぐ、庭の自然を見て和むことができるというのは、なんとも嬉しいアイディアである。

さらに奥に進むと、左手には和室が。そして正面には、吹き抜けのリビングと、やや天井を低く抑えたダイニングが配されている。寛ぎの場の中心となるこのリビング、ダイニングは中庭に面して配置されており、大きな開口部が設けられているのが特徴。木製の引き戸を開ければ外と中が一体となる、実に開放的な空間だ。「通常は90㎝ほどが一般的な軒をあえて1mほど出し、軒裏をレッドシダーで仕上げることで、奥行きと深みのある表情をつくり出しています」と腰越さん。数センチ単位でこだわったデザイン性の高さは、緻密な仕事ぶりで定評のある腰越ならではといえるだろう。

このリビングには、Aさんの要望を叶えた蔵書用の書棚とPCコーナーが。そしてAさんのお気に入りだというマッサージチェアが置かれている。中庭の樹木を眺めつつ、好きな本を読んだり、マッサージチェアに癒されたり…。Aさんの希望通り、まさに仕事で疲れた心と体をオフにできる、寛ぎの空間だ。そして、このリビングの奥にあるのが、広いパントリーを備えたキッチン。窓の向こうには畑が広がっており、のどかな景色を眺めながら料理ができるよう工夫されている。

階段を2階に上がってみると、そこにあるのは夫婦の寝室と、お子さんの寝室。そして家族共用の広々としたウォークインクローゼットである。ウォークインクローゼットは子ども部屋からもご夫婦の寝室からもアプローチができるようになっているのが特徴。家族全員の使い勝手がしっかりと考えられているのも重要なポイントだ。

実際にこの家に住み始めたAさんは、ドア枠や窓枠にまでこだわった腰越さんの緻密な設計にいたく感動し、とても大切に住んでいらっしゃるという。「特に中庭の雰囲気がとても気に入っていらっしゃるとのことで、お庭を見ながらリビングで寛いでいらっしゃるそうです」とほほ笑む腰越さん。腰越さんの意図通り、中庭はもう1つのリビングとして、A邸の暮らしを美しく彩っているようだ。

間取り図

1F間取り図

2F間取り図

3F間取り図

お家のデータ

施主:A邸
所在地:神奈川県中郡二宮町
家族構成:夫婦+子供1人
延床面積:124.74㎡