2020/05/30

家の中に公園があるかのよう。 子どもがのびのび遊べる住まいのつくり方

ノアノア空間工房の大塚泰子さんがプランニングしたのは、敷地内の高低差を活かし、中庭を周遊しながら2階に上がっていくスキップフロアの家。大人が心地よくくつろげて、子どもはのびのびと育つ──。中庭はつくり方次第で暮らしの豊かさに大きな差が出ることを実感する、魅力的な住まいのポイントを聞いた。

高低差を活かした楽しい動線。
外とのつながりを感じられる住まい

大塚さんは、両サイドに隣家が迫る住宅街で採光とプライバシーを確保するために、中庭のあるプランを提案。外観はすっきりとシャープな印象だが、どことなく温かみも漂う。敷地内には段差があるため、邸内は高低差を活かしたスキップフロアになっている

建物は中庭を周遊して2階へ上がる「ロの字型」。写真左に行くとカウンター付きのワークスペースと通路、階段があり、中2階の子ども室に続く。LDKの向かいに位置する子ども室へは、中庭の階段からも行ける。写真右上部には中2階から2階へのぼるアイアンの室内階段が見える

中庭から明るい光が差し込むリビングスペース。グレーとホワイトの2トーンカラーの壁が洒落た雰囲気を醸すが、下のグレーは高低差のある敷地でしっかりつくった基礎のコンクリート。あえてそのまま見せてデザインに活かしつつ、ローコストにつなげている

 

リビングに入ると、窓越しに小さな公園があった。

いや、正確には中庭なのだが、緑鮮やかな樹木の先には数段のコンクリート階段があり、右手にはアイアンの室内階段が見える(これがジャングルジムを思わせる)。暮らしに光と緑を与えてくれるだけでなく、高低差で空間的な動きも感じさせる中庭は、どことなく公園のよう。アイデアを駆使して元気に遊ぶ子どもたちの姿が目に浮かぶ。

施主さまご夫妻と2人の男の子が暮らすこの家は、両サイドに隣家が迫る住宅街に立っている。「中庭をつくったのは住宅街という環境でプライバシーを守り、採光も確保するためです。それまでマンションにお住まいだった施主さまは、庭のあるプランをすぐ気に入ってくださいました」と話すのは、この家を設計した大塚泰子さん。

周囲の環境のほかにもう1つ、大塚さんが着目したのは敷地の形状だ。「ここは敷地内に高低差があったのですが、平地にする工事はかなりのコストがかかります。そこで、高低差をそのまま活かした家をつくろうと考えました」

こうして、中庭を中心に据えた「ロの字型」のプランが完成。邸内は土地の高低差を活かした造りになっており、1階はLDK。そこから中庭沿いの通路を通って数段の階段をのぼると中2階の子ども室、折り返してさらに数段の階段をのぼると主寝室や水まわりのある2階、というスキップフロア。中庭を周遊する動線上に生活空間が広がり、どこにいても外とのつながりを感じられる心地よい住まいとなった。
 

採光だけじゃない。
暮らしを豊かにする中庭の役割

邸内のどこにいても見える中庭は、お子さまたちの格好の遊び場。空間の高低差が好奇心を刺激する

中庭はバルコニーからも見え、子どもが無条件でワクワクする空間。兄弟で仲よくサッカー遊びなども楽しむ

 

中庭は、当初の目的だった「採光」「プライバシー確保」だけでなく、開放感や緑の眺めなどの多彩な役割を果たし、この家になくてはならない空間になっている。

敷地の高低差を違和感なく住空間に馴染ませつつ、家族それぞれの居場所をつないでいることも中庭の役割の1つだ。LDK~子ども室~主寝室と、中庭を周遊しながら少しずつ床レベルが上がる設計は、子ども室が大きな踊り場のようでもある。お子さまは家族が集まるLDKにも、両親のいる主寝室にもすぐ行ける安心感を得られるのだ。

また、LDKから子ども室へは邸内の通路に加え、外へ出て中庭を通り抜けていく直線の動線もある。中庭はガラス窓で囲まれているので、子ども室のドアを開けておけばLDKから中庭越しに子どもの様子がわかり、ほどよい距離感で気配を感じられる。

もちろん、中庭はお子さまたちの遊び場としても活躍中だ。「出入口が複数あり、ベンチとして使える階段も備えた空間ですから、居場所も遊び方も多彩です。お子さまが自分で考えて遊ぶ力がつくのではないかと思います」と大塚さん。

中庭にここまで多様な役割を与えるとは、大塚さんの発想は実に豊かだ。その根底には、子育て世代の住宅設計では常に、子どもの暮らしを具体的にイメージするという大塚さんのポリシーがある。

「やっぱり、お子さまの成長を考えて家づくりを決意する施主さまは多いんです。このお宅もお子さまの個性や才能が開花するような家になったらいいなと考え、ご家族みんなで楽しめる空間づくりを意識しました」

同時に、通路にご主人の書斎的なワークスペースをつくるなど、大人が心地よく暮らせる家にすることも忘れない。「大人がストレスを感じないことは、お子さまにとってもいいことだと思いますから」
 

ありきたりではない、
洒落たデザインをローコストで

キッチン・ダイニング。キッチンはオリジナル。壁に沿ってつくったカップボードは家電などを置けるほか、食器収納にも使える。ここからも中庭の緑が見え、気持ちよく家事ができる。写真奥は中2階への階段

子ども室の入口は四隅に丸みをつけ、やわらかな印象に。入口は2つあり、壁を設置すれば2室に分けられる

 

上品でセンスのよい内装も、大塚さんがつくる家の特徴の1つだ。この家も、オーク材やアイアン、白壁をバランスよく組み合わせて、デザイン性の高い空間に仕上げている。

うれしいのは、大塚さんは予算に配慮しながらこうした空間を生み出してくれることだ。例えばLDKの壁は、グレーのコンクリートと白のペンキ塗装の2トーンカラー。デザイン重視の仕上げかと思いきや、「コンクリートは家の基礎の部分をそのまま見せています。その分、ローコストになるんです」とのこと。

コストダウンでいうと、大塚さんは収納でも「よくやる手法」があるという。それは、小さな収納をあちこちにつくらず、要所要所に大容量の収納スペースをつくること。例えばこの家では、2階の洗面室に大きな納戸をつくった。洗面台の上下に収納を造作するより安価で収納量も多いうえ、洗面台まわりがすっきりしたデザインになる。

コスト意識の高い合理的なアイデアや、洗面とバルコニーを隣接させるといった家事動線のよい間取りには、女性建築家ならではの「女性目線」が活きている。しかし、見た目や住み心地のよさにプラスして、子どもの楽しみも大人のくつろぎもかなえてしまう大塚さんの手腕は、単に「女性目線」でくくるのはもったいないと感じる。

この家の施主さまをはじめ、大塚さんに家づくりを託す人の多くはHPなどで大塚さんの作品を多数見ており、あまり細かいリクエストをしてこないという。「この人におまかせすれば大丈夫」。大塚さんの設計には、そう思わせる独特の魅力があるのだ。
 

間取り図

1F間取り図

2F間取り図

お家のデータ

所在地:神奈川県厚木市
家族構成:夫婦+子供2人
敷地面積:127.80㎡
延床面積:104.57㎡
予 算:2000万円台